マジックとスケボーとオジサマが繋がった話

いつだかの話。すすきので路上マジックをしていたところ、二人組みのオジサマが立ち止まってくれた。それはもう超ナイスリアクション超連発で僕は超楽しくマジックを超披露できた。

その後も何組かのお客様にマジックを見ていただき、スケボーに乗って帰路に着いた。すすきのから幌平橋へ。スケボーで走りやすい中通りへと入ると、「おーい!」と呼ぶ声が聞こえた。

なんだろう?と振り返ると、暗闇の中でスーツ姿の男性二人が笑顔でこちらを見ていた。スケボーに乗っている僕を応援してくれているのだろうか?

僕が手を振ると、彼らも手を振り返してくれた。もしかして知り合いなのだろうか?僕はスケボーから足を下ろして急ブレーキをかけ、それを小脇に抱えて彼らの元へ走った。

暗闇の中から彼らの顔が浮かびあがると、それが誰なのかすぐにわかった。さっきマジックを見てくれた超ナイスリアクション超連発なオジサマ二人組だ。

スケボーに乗っているところを見つかるとは想定外。

片方のオジサマに「家どこなの?」と問われ、僕は「幌平橋です」と答えた。

すると続けて「鴨々川沿い走るの?」との質問。鴨々川は中島公園という大きな公園の西側を流れている小さな川だ。すすきのにも続いている。

なぜこんなことを聞くのだろうと思いつつ、普段よく走るところなので「走ります」と返答した。

オジサマは目を大きく開いて「やっぱり!」言った。トイストーリーのウッディのような目だ。

よくよく話を聞いてみると、彼の家が鴨々川沿いの渡辺淳一文学館の側にあり、毎朝スケボーが通るのを目撃していたそうなのだ。それは紛れもなく僕である。朝急いで出勤している僕である。僕の家も徒歩1分くらいの距離にあるから間違いない。

鴨々川沿いの道はデコボコしたタイル路でスケボーの音も響きやすい。「ガラガラとうるさいのは何の音だろう?」とオジサマは気になっていたそうだ。

「静かに走ります!」と僕が言うと、「いいよ全然気にしなくて」と素敵スマイルのオジサマ。マジックでもらったチップをそのままあげたくなるような素敵スマイルだった。

札幌って狭いなあと改めて思った。

いつかすれ違った通行人と、いつか仲良くなる。そんな世界に僕は生きているんだな。今すれ違ったあなたと、ゆっくりお話ししてみたい。

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